PPS樹脂 トレリナ®

テクニカル情報|機械的性質|異方性

Ⅰ. 異方性とは

Fig.5.56 ガラス繊維の配向(模式図)Fig.5.56 ガラス繊維の配向(模式図)

ガラス繊維や無機フィラーで強化したPPS成形品と金属製品との大きな違いの一つとして、機械的性質などの異方性が挙げられます。一般的に、射出成形品は金型内を溶融樹脂が流れる方向(MD)の機械的強度は高くなり、その直角方向(TD)は低くなります。これは、Fig.5.56の模式図に示すように主にガラス繊維などアスペクト比が大きい強化材が、射出成形時のせん断力によって流れ方向に配向する比率が高くなることが原因で起こる現象です。この強化材の配向は、射出成形条件の他にも成形品形状や金型など様々な要因により変化しますが、流れ方向の機械的特性はその材料の上限であり、直角方向は下限(ウエルドを除く)に近い特性と考えることができます。そのため、特に直角方向に作用する最大荷重が流れ方向の静的強さの約1/2以上となる場合は、ゲートの最適化(形状、数)、製品肉厚、構造補強(リブ等)など、異方性へ配慮した製品設計が必要です。
 異方性の評価は、射出成形した平板の中央部を切削・研磨加工した試験片を使用し、その他試験条件は、ISO178に準拠しています。(Fig.5.57)

Fig.5.57 異方性評価用成形品
Fig.5.57 異方性評価用成形品

Ⅱ. 曲げ強さの異方性(温度依存性)

Table.5.6 曲げ特性の異方性(23℃)
グレード名 異方性(TD/MD)
曲げ強さ 曲げ弾性率
A504X90 0.5 0.6
A604 0.5 0.6
A310MX04 0.4 0.7
A610MX03 0.5 0.7
A575W20 0.5 0.6
A673M 0.6 0.5

トレリナ®の代表的な6グレードの曲げ特性の異方性をFig.5.58~69に示します。23℃における異方性を直角方向と流れ方向の比(TD/MD)で表すとTable.5.6に示す通りです。異方性が1の場合は異方性がない状態を示し、0に近づくほど異方性が大きいことを示します。曲げ強さについては、流れ方向の約1/2が直角方向の曲げ強さとなりますが、強化材の含有率が低くなるほど異方性は小さく、強化材の含有率が高くなるほど異方性は大きくなる傾向にあります。また、曲げ弾性率においては、強化材自体の弾性率が支配的となることから、無機フィラーや強化材の含有率が高いA310MX03やA610MX03などのハイフィラーPPSは異方性が小さい傾向にあります。

【一般強化グレード】

1 A504X90(標準)

  • Fig.5.58 曲げ強さの異方性(A504X90)Fig.5.58 曲げ強さの異方性(A504X90)
  • Fig.5.59 曲げ弾性率の異方性(A504X90)Fig.5.59 曲げ弾性率の異方性(A504X90)

2 A604

  • Fig.5.60 曲げ強さの異方性(A604)Fig.5.60 曲げ強さの異方性(A604)
  • Fig.5.61 曲げ弾性率の異方性(A604)Fig.5.61 曲げ弾性率の異方性(A604)

3 A310MX04(標準)

  • Fig.5.62 曲げ強さの異方性(A310MX04)Fig.5.62 曲げ強さの異方性(A310MX04)
  • Fig.5.63 曲げ弾性率の異方性(A310MX04)Fig.5.63 曲げ弾性率の異方性(A310MX04)

4 A610MX03

  • Fig.5.64 曲げ強さの異方性(A610MX03)Fig.5.64 曲げ強さの異方性(A610MX03)
  • Fig.5.65 曲げ弾性率の異方性(A610MX03)Fig.5.65 曲げ弾性率の異方性(A610MX03)

【エラストマー改質グレード】

5 A673M

  • Fig.5.66 曲げ強さの異方性(A673M)Fig.5.66 曲げ強さの異方性(A673M)
  • Fig.5.67 曲げ弾性率の異方性(A673M)Fig.5.67 曲げ弾性率の異方性(A673M)

6 A575W20

  • Fig.5.68 曲げ強さの異方性(A575W20)Fig.5.68 曲げ強さの異方性(A575W20)
  • Fig.5.69 曲げ弾性率の異方性(A575W20)Fig.5.69 曲げ弾性率の異方性(A575W20)

Ⅲ. 衝撃強さの異方性(温度依存性)

Table.5.7 衝撃特性の異方性(23℃)
グレード名 異方性(TD/MD)
ノッチ付シャルピー衝撃強さ
A504X90 0.8
A604 0.8
A310MX04 0.8
A610MX03 0.9
A575W20 0.7
A673M 0.7

トレリナの代表的な6グレードのノッチ付衝撃強さの異方性をFig.5.70~75に示します。23℃における異方性を、曲げ特性と同様に直角方向と流れ方向の比(TD/MD)で表すとTable.5.7に示す通りです。衝撃特性の異方性は、おおよそ流れ方向の7~8割が直角方向の衝撃特性です。アスペクト比の小さい無機フィラーで強化しているA310MX04やA610MX03は異方性が小さく、エラストマー改質タイプのA575W20、A673は異方性が大きい傾向にあります。

【一般強化グレード】

1 A504X90、A604

  • Fig.5.70 ノッチ付衝撃強さの異方性(A504X90)Fig.5.70 ノッチ付衝撃強さの異方性(A504X90)
  • Fig.5.71 ノッチ付衝撃強さの異方性(A604)Fig.5.71 ノッチ付衝撃強さの異方性(A604)

2 A310MX04(標準)、A610MX03

  • Fig.5.72 ノッチ付衝撃強さの異方性(A310MX04)Fig.5.72 ノッチ付衝撃強さの異方性(A310MX04)
  • Fig.5.73 ノッチ付衝撃強さの異方性(A610MX03)Fig.5.73 ノッチ付衝撃強さの異方性(A610MX03)

【エラストマー改質グレード】

3 A673M、A575W20

  • Fig.5.74 ノッチ付衝撃強さの異方性(A673M)Fig.5.74 ノッチ付衝撃強さの異方性(A673M)
  • Fig.5.75 ノッチ付衝撃強さの異方性(A575W20)Fig.5.75 ノッチ付衝撃強さの異方性(A575W20)